相続時精算課税制度とは?制度の内容や注意点をわかりやすく解説
自らが所有する財産を子や孫に譲る場合、その方法は大きく2つ存在します。
一つは「相続」、もう一つは「贈与」です。
ここではそのうちの「贈与」について、「相続時精算課税制度」にスポットをあてていこうと思います。
相続時精算課税制度とは
「相続時精算課税制度」とは、譲り受けた財産の累計金額が2500万円を超えるまでは、贈与税が発生しない制度です。
2500万円をオーバーした部分は、一律20%の贈与税が発生します。
適用対象になる要件も定められており、誰でも制度を利用できるわけではなく、0歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫等の受贈者に対して財産を譲り渡したケースにおいて適用が可能です。
なお、制度の適用を受ける場合、財産を譲り受けた年の翌年3月15日までに必要な書類を提出する必要があります。
相続時精算課税制度の特徴
・非課税枠が大きい
2,500万円を上限として非課税枠が設定されています。
更にこの上限枠は、財産を譲り受ける人単位での累計計算です。
例えばX4年に父から相続時精算課税制度を適用して1,000万円、X5年に700万円の贈与を受けたとします。
このケースにおいて累計金額は1,700万円ですが、その全額が非課税で、更に800万円の非課税枠が残ることになります。
・制度の選択適用が可能
祖父からの贈与は「相続時精算課税制度」、祖母からの贈与は「暦年課税」のように、贈与者毎に選択適用することができます。
これは、非課税枠の計算が受贈者単位の累計計算であるからです。
・超過した分の税率が一律である
2,500万円をオーバーした場合は、一律20%の税率が適用されます(令和6年以降は基礎控除後の財産が2,500万円を超えた場合)。
例えば暦年課税を適用していて3,300万円の贈与があった場合、贈与税は45%ですが、相続時精算課税制度では20%です。
・相続税が発生しないケースで有利になる
例えば2000万円の財産を持ち、妻と一人娘がいるYさんのケースにおいて、まとまったお金が必要であり1000万円を贈与したいと仮定します。
通常の形式で贈与した場合、贈与税が発生します。
しかし、相続時精算課税制度を使用して贈与した場合は、非課税枠2,500万円の範囲ですので贈与税は発生しません。
また、相続時には1000万円に残った手元財産である1,000万円を合計した2,000万円が課税対象財産の評価額となりますが、これは基礎控除の金額(3,000万円+2人×600万円=4,200万円)を下回るため、相続税は発生しません。
注意点
一見良いこと尽くめにみえる「相続時精算課税制度」ですが、当然注意点も存在します。
例えば以下のようなものを挙げることができます。
・贈与税が消滅するわけではない
制度の適用を受ける場合、贈与時は2,500万円までが非課税になります。
しかし、贈与した人が死亡して相続を行う場合は注意が必要です。
なぜなら、贈与した財産金額を相続財産の評価額に足し合わせる必要があるからです。
「相続時精算課税制度」は、税金の発生を将来に繰り延べているに過ぎません。
贈与税で非課税になった分が、後から相続税としてやってくるイメージです。
・小規模宅地等の特例が使用できない
小規模宅地等の特例とは、適用条件を満たしている場合に土地の評価額を最大80%まで減額を認める制度です。
「相続時精算課税制度」を適用して贈与した土地は、相続や遺贈ではなく贈与によって取得した扱いになります。
よって、特例の対象外です。
・一度適用すると、暦年制度を二度と使用できなくなる
一度でも「相続時精算課税制度」を適用すると、その後は暦年制度への変更はできなくなります。
相続や贈与のご相談は、小原善之税理士事務所にお気軽にお問い合わせください
「相続時精算課税制度」には長所・短所の双方が存在します。
2,500万円という金額に安易に飛びつくことによって、後々相続税が発生した場合に影響が生じる可能性もあります。
「相続時精算課税制度」の適用を検討する場合は、会計税務の専門家である税理士に相談することをお勧めします。
相続に関してお悩みの皆様は、小原善之税理士法人にお気軽にご相談ください。
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